2011年10月30日日曜日

「大規模コラボレーション兵器」の時代


「ウィキノミクス」(日経BP社) ドン・ダブスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ(原著は2006年)

「大量破壊兵器」ならぬ「大規模コラボレーション兵器」とでも言えようか。無料のインターネット電話からオープンソース・ソフトウェア、世界規模のアウトソーシング・プラットフォームにいたる低コストのコラボレーション・インフラストラクチャーのおかげで、従来なら大企業にしかできなかった形で数多くの個人や小規模メーカーが製品を協創し、市場に浸透し、顧客に満足を届けられるようになった。その結果、新しいコラボレーション能力とビジネスモデルが登場し、これを受け入れる企業が力をつけ、対応できなかった企業は没落していく。
現在、メディアとエンターテインメントの世界が激変しつつあるが、これは、マスコラボレーションによって経済が根底から変化する予兆である。かつて、「プロ」は別格とされていたが、いまは、知識の源泉として認められたプロも、勝手気ままな「アマ」と同列となった。自発的参加によって成長しているプロゴスフィアは五〇〇〇万を超えるサイトのネットワークであり、一〇〇〇万単位人々がサイトを次々と更新し、ニュースや情報、自分の意見を公開している。(中略)
個人個人が知識やコンピューターの能力、帯域などの資源を共有しながら、だれでも使えるし改変もできる、無償でオープンソースの財やサービスを作れるようになった。それだけではなく、個人がコストをほとんど負担することなく、「デジタルコモンズ(共有財)
」に貢献可能となったことも、それが人の集合としての活動をさらに魅力的なものとした。実際のところ、ピアプロダクションは社会性がとても高い活動である。いま個人じゃ、コンピューターとネットワーク接続し、そして、発想のひらめきさえあれば経済に参加できるようになったのだ。
(中略)
このような変化から、知識や能力、創造力が従来はかんがえられなかったほど分散された世界、価値の創造がすばやく流動的、かつ常に破壊的となる世界が生まれようとしている。他者とつながっている者だけが生き残れる世界だ。力の均衡はすでに変化しつつあり、コラボレーションを活用するか、消え去るか、という厳しいルールに事業はさらされるようになった。この点を理解できない者は孤立する。知識を共有し、適応させ、更新して価値を創造するネットワークから切り離されてしまうのだ(P.20-22)

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