2011年11月5日土曜日

テストの正答率を直前の5分で引き上げる方法:プライミング効果

マルコム・グラッドウェル『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』、光文社、2006年
Blink, Malcolm Gladwell, 2006

 プライミングは洗脳とは違う。「昼寝」とか「ぬいぐるみ」という単語でプライミングをしても、記憶の底にある子ども時代の個人的な情報を引き出すことはできない。私に代わって銀行強盗を働くようにプログラムすることもできない。一方でプライミングの効果は小さくない。
 二人のオランダ人研究者がある実験をした。雑学クイズのゲームから難問ばかり四二問集め、学生のグループに答えさせた。学生の半分にはゲームを始める前の5分間に教授になることについて考えさせて、頭に浮かんだことをすべて書き留めるように支持した。この学生たちは五五・六%の質問に正しく答えた。残りの半分にはゲームの前にサッカーのフーリガンについて考え冴えた。彼らの正答率は四二・六%だった。「教授」のグループが「フーリガン」のグループよりも物知りだったわけはない。頭がよかったわけでも、集中力があったわけでも、真剣だったわけでもない。「頭がよくなった」ように感じただけだ。そして頭のよさを示す概念、ここでは教授と自分と関連づけることで、難しい質問に緊張しながら正しい答えがすらすらと出てきたのだ。五五・六%と四二・六%の差は大きい。合格と不合格を分けるかもしれない。(P.61-62)

困ったことに、この翻訳本は参考文献リストが省略されているので、このオランダ人の研究者が誰なのかがわからない。英語版WikipediaのIndirect tests of memoryのWord Stem Completion (WSC) Taskに、「One of the first uses of the word stem completion (WSC) task was by Elizabeth K. Warrington and L. Weiskrantz in 1970」とあり、この研究者は、オランダ人のようなので、この研究者のようだ。そういう意味では、今から40年以上も前にわかっていた効果のよう。

人間は、自分の中で自発的に意志決定をしているようで、実は、無意識的には影響を受けており、それらを自覚することさえできないということを示している研究で、やっかいなことに、人種差別のような偏見の場合は、先にそういうものを持っていると、意識しないようにしていても、無意識的に偏見を裏付けするように行動を起こしてしまうという傾向が出てしまうという話が、この話の後に続いている。


この本もいかに無意識に得ている情報に人間が影響を受けやすいか、逆に、それを知識として知っていれば、利用できるか(利用されているか)が説明されている。サイエンスライターのマルコム・グラッドウェルの著作はどの本もおもしろい。


心理カウンセリングの知識を学ぶ では以下のように紹介されている。
【プライミング効果とは】
 プライミング効果は、一度受けた刺激が後に受ける刺激に影響を与えるというものをプライミング効果と言います。何度も関連のありそうな言葉を上げた後で、言葉を連想すると関連付けて考えてしまうのがプライミング効果です。
【プライミング効果の事例】
自動車、船、新幹線という単語を見せた後に、空を飛ぶものは何と聞くと、飛行機と答える可能性が高くなります。他にも飛ぶものはあっても、最初に聞いたものから無意識に連想してしまうのがプライミング効果といえます。

実際、テレビCMでは、こうした効果はよく利用されている。
有名人が何かの商品を褒めるために出てくるのは、無意識的にその人が持っている価値と結びつけ、商品購買の意思決定の際に何となく、望ましいと感じるモノを購入するように、すり込んでしまうためだ。
裏返しに、CMを見る場合には、何歳ぐらいの、どのような芸能人を使っているのかを見るとことで、その企業は、ある製品を、誰に売りたいのかが明瞭に見えてくる。30代女性に買ってほしい商品であれば、30代女性で望ましいイメージを持っている人が、必ず出てくる。
そして、当然のように、CMの世界には、幸せに包まれたような家庭や個人しか登場しない。

この短い引用から言えるわかりやすい教訓は、試験の前には「大学教授」とか難しいことについて考えて、紙に書き出すなんてことをやると、結果がよくなるかもしれないと言うこと。お試しあれ。

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